黙って私のムコになれ! (2011年2月17日 執筆)…58点 |
※ 以下、本作のネタバレや重大な情報を含んだ感想・レビューになっているのでご注意ください。 ......................................................................................................................................................................................................................................................... ■ 概要 ごく普通のテンプレ的キャラクター、よくある舞台設定のゲーム。 プレイ時間は短めなのが良し! ■ 凛シナリオ(55点) このような典型的なお嬢様キャラからシナリオを作るなら、誰もが最初に思いつくであろう、一般人とお嬢様の恋愛観のズレをテーマにしたシナリオ。 当然、お嬢様が本当の愛とは何かを主人公とのイベントによって悟る事で収束していくのですが、主人公は『愛される資格』として何か客観的に 価値あるものを持っている事を要求されるというバイアスに陥っているのが本シナリオの特徴。 シナリオの前提として、凛も直樹も『オンリーワンではなくナンバーワンが恋愛対象として資格を有する』というバイアスを備えており、特に 直樹のこのバイアスは玲於奈との過去に由来するものと準備は十分。そこで凛と直樹がこのバイアスを正していく相互作用にシナリオ的な面白さを 期待させられたのですが…直樹のバイアスはシナリオ上いつのまにか無視されていて、直樹の役割は凛のバイアスを正す側にすり替えられています。 あれ?自分に何もないから愛されないとか悩んでたのに、いつのまにか条件でムコを選んでいるはずの凛が自分を本気で愛していると信じ込んで いて、さらになぜ凛の恋愛観に対して説教しているの???…と、当初の設定と展開が矛盾している点で、肩透かしを食ったまま終わりました。 ■ 玲於奈シナリオ+佑里恵シナリオ(60点) 正ヒロイン(?)の玲於奈のシナリオはおまけ。実質的には佑里恵シナリオがメインの様子。 『隠された過去』が玲於奈、佑里恵の葛藤となって、過去の贖罪の念から玲於奈が佑里恵に直樹を譲るというがんじがらめの王道的三角関係シナリオ。 他のシナリオの酷さと比べて、意外にも玲於奈、佑里恵の内心描写は丁寧だったのですが、最終的なシナリオの収束点が玲於奈を選んだ場合は 予定調和的にハッピーエンド、佑里恵を選ぶと後に再会して終わりと、プレイヤーが一番期待する両者の和解や問題解決に対する直樹との関係性を 完全に無視する形で幕を閉じてしまっているので、あー…としか言えないです。 それでも作中では一番いいシナリオです。 ■ 遥シナリオ(50点) 玲於奈との友情か、直樹との愛か…これもまた王道的三角関係シナリオ。 シナリオも王道なら結末も王道で、親友である玲於奈がふたりを応援して身を引くというもの。 それでシナリオライターがこの骨組みを使って何を描きたいのか?という部分に注視していたのですが、何も描かずそのまま終わりました。 物語の肉付けも表現したいものも何も見当たりませんでした。 ■ 小鳥シナリオ、依子シナリオ(40点) 文章として物語の説明はありましたが、シナリオがシナリオライターによって途中で放棄されているので省略。 ■ BGM 個人的に『Finale』が情景描写とマッチしていると感じたので好きです。 ■ キャラ 凛が好きかどうか…? 登場人物のキャラクタを決定づけるシナリオが空なので、見た目だけで中身の判断が難しいです。 テンプレ設定はあってもキャラに作品的な独自個性が無いのでなんとも…。 ■ 総評 シナリオライターは仕事としてシナリオを嫌々書いたのか、誰かに遠慮しているのか…?と思うほど、表現したいものが見当たりませんでした。 シナリオも舞台設定もキャラクターも文章的な修辞も、他の作品のコピーにしか見えず作品・シナリオライターの独自色が楽しめません。 10やりたい事のうち3しか出せていないなら『風呂敷を広げすぎた作品』となるところ、本作は1やりたい事を1やっただけの、物足りないを通り越して 味気ない仕上がりにしか見えないです。キャラも舞台設定もテンプレ的なものなので、そういった素材をシナリオライターがどう魅せてくるのかが 楽しみだっただけにこれは…。たとえば昔話の『桃太郎』をアレンジして面白くしてください、と言われたのに、本当にそのまま桃太郎の紙芝居を 見せられたような味気なさしか残りませんでした。 シナリオの前提と展開の矛盾以外は無難にまとまった物語なので、シナリオの良い作品と期待しなければ普通の物語として楽しめそうです。 でもこのシナリオライターならワガママを通せば、個性はなくとも完成度で勝負できるようないいものが書ける気がします。 以上 |