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EVE new generation X(2007年9月11日 執筆)



 見どころ: シナリオ




■ シナリオ

 シナリオ自体は名作といわれている初代EVE Burst Errorに匹敵する面白さ。
 ただし、ロジックが弱かったりテンポが悪いのが影響してか、プレイ中はどこか集中できないものがあります。
 一番の原因は操作性。会話では捜査というコンセプションであちこち調べながらプレイする形式が採られていますが、
 これがはっきり言えば蛇足。どこをクリックしても進まないという状況に何度か陥ってそのたびにテンポを崩され
 ストレスが溜まるのがなんとも…。この形式はもはや悪い意味で古い気がします。

 しかし、裏をかかれて『あっ!』と言ってしまうような面白さに関しては秀逸。
 ただし、メモをとらずに漫然と読み流すだけでは何となく展開が読めるだけの難解ゲーム。学校や仕事で問題解決手法
 の類(特にコンサル、シンクタンク系)をやった人間なら結構楽しめると思います。ただ心理学を齧っている人間には
 相性悪そうな予感…。
 大筋においてトリックがしっかりしていたのでストーリーを読み進める上で自然と理解する事ができました。
 ただ、後半になるにつれてテンポが良くなって面白さが増してくる分、どうしてもプレイヤー立ち止まって考えなけ
 ればならないような、過多の情報が積み上がってくるので、プレイヤー自身が整理をしなければならないというところ
 で頭を使います。
 また、伏線が無理矢理なこじつけだったり、登場人物が嘘を言い過ぎていて本当の意味でプレイヤーが推理をする
 楽しみが殺されてしまっているのが不満点です。特にエフィがひどいです。
 ラカンの認知発達理論を持ってきたのは知識を与える目的で親切でいいのですが、致命的なことにその理論とゲーム上
 の概念が矛盾してしまっているのがプレイヤーから見て明白なのが残念。自我の独立性の形成過程にその器である脳の
 存在が限界である事を指摘しおきながら、脳を前提としない独立した自我を観念するのは原始的な矛盾です。これなら
 ラカンについて言及せず、超常現象である事を物語の上で認めてしまって軽く流す方がアラが少なくてよかった気がします。
 たぶんシナリオライターも気にしている部分だとは思いますが…。

 展開に関しては文句なし。いい意味で斜め上を行ってくれるシナリオ運びです。
 読み手の頭を叩き起こすところと、登場人物の心の動きに注視させる部分とで切り分け方が非常にうまいので、極自然と
 物語にぐいぐい引き込まれていきました。ただ、操作性の悪さで途中でどうしてもストレス溜まる…。



■ キャラ

 EVEシリーズを多少やってきましたが、今回のまりなは頭が悪すぎる…。
 一流の捜査官なのに、集めた材料が全部偶然でしたって捜査官としての能力はいったい(ry
 一方の小次郎はいつもどおりで安心感がありました。
 登場人物はアルト最高!最後の最後で判明する事実でそれぞれの行動の深い意味が判明したのが非常に面白いです。



■ 音楽

 Relations、Floweret particle が最高に好きです!
 ハードボイルな雰囲気を醸し出すJazzにしびれました。EVEシリーズと言えば、ダンディな親父が出てくるのが
 自分にとって好きな部分ですが、その好きな部分を見事に演出してくれる音楽があってまことにすばらしい!



■ 総評

 シナリオがかなりいいだけに、操作性の悪さだけは何とかして欲しい。
 前提にしているラカンについても、説明と矛盾するゲーム上の設定が読み手に見えてしまっているのが今ひとつです。
 物語の現実性をラカンによって担保しようとしたものの、持ってきた理論がゲーム上の実在と矛盾しているのを
 うまくぼかせなかったのが惜しいです。これなら始めから、そういう設定だった、と軽く流すのが無難です。
 あと、ラカンについて説明するなら認知発達段階の前後関係も詳しく載せて欲しかったところです。
 『二人であることの病い パラノイアと言語』(朝日出版社)という鏡像理論はじめ初期ラカンについて解説した本
 があるんですが自分の知る範囲では、これがゲームの内容に近く比較的分かりやすかった気がします。
 ただ、ラカン全体を理解するには『精神分析の四基本概念』(岩波書店)がいいらしいです。
 しかし、ゲームではピアジェやストロース、ラカンといった古い学者ばかりでなぜ最近の学説をモチーフにしたのがでないのか…。

 トリックは全体的に楽しめるものでした。
 ただ、細かい伏線などではどう考えてもこじつけや無理があるものがあったりしましたが、大筋のトリックが面白い
 ので、何だか許せてしまいますw
 例によって話のスケールが大きくなるのは目に見えた展開なのですが、今回はそのお馴染み臭さを後半の展開のスピード
 でカバーしたような印象があります。ただ、どんでん返しの連続なのでプレイを止めて所々で考えながら進めないと
 細かいトリックの意味まで頭が回らないのでプレイしていて非常に疲れます。トリックの複雑さが読み手の情報許容量を超えた
 ものという意味でストーリーの煩雑さが払拭できない複雑なゲームという印象もありました。
 でも最後にふりかえってみれば面白かったです。




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