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リトルバスターズ!EX (2008年8月2日 執筆)
   



   "――この青春(イマ)を駆け抜けろ。"
   (リトルバスターズ!エクスタシー製品パッケージ裏面より)




 リトルバスターズ!EXは友情を土壌にして独り立ちをテーマとして描いているものなど、
 くちゃくちゃ爽快で涙無しには語れない話が満載の作品です。
 *例によって独断的な考察・レビュー・感想です。ネタバレになるので注意!


      【作品の構造】
      【シナリオ】
      【その他】
      【総評】



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作品の構造

 プレイを続けていくうちに世界の全体像、そして事の真相が判明するという構造です。
 シナリオの中には世界の構造を利用しまくったものや、その世界の構造を舞台設定に利用して物語を描いている
 ものもあり様々です。無印に比べて詳細に世界の構造が語られていたり、比較的理解しやすいようになっています。
 以下、個人的な見解に基づいて世界の構造やシナリオの構造について考えを書いています。


■ 世界の構造



 無印から世界の構造について随分と変更やブレ幅の縮小があった模様。
 虚構世界は理樹、鈴を除くリトルバスターズのメンバー8名によって作り上げられます。
 その人数が減れば減るほど維持は難しくなり、世界は不安定なものになっていきます。

 恭介たちの作り出した虚構世界とはメンバー全員の意識や記憶に起因する世界像の総体ではなく、主体による観測
 を前提としない客観的存在です(そうでなければ構成要素に自我を観念できない)。したがってその箱庭では現実世界
 と同じような物理が働き、構成要素であるクラスメートや佐々美、佳奈多なども自我を持つ主体的実在として箱庭の
 中を自由に行動することができます。たとえば佳奈多が世界の仕組みに気付いて解明を試みたりループ世界の記憶を
 次回に継承していく事などの、管理者の予定するフレームワークからはみ出したメタ的な行動も可能です。
 その意味で虚構世界は恭介たちの知識や記憶から完全に作られたというよりは、ブラックボックス化状態の現実世界を
 一部分そのままコピーして出来上がったもうひとつの現実世界と言う方が近い気がします。

 虚構世界内での人間は3種類に分かれ、@管理者、A参加者、B構成要素に分類できそうです。
 @管理者は恭介や謙吾といった虚構世界の仕組みを理解してそれを行使できる立場の人間であり、構成要素や参加者
 に干渉が可能です。恭介は構成要素であるレノンをあやつり、謙吾も剣道部員の後輩の行動を支配していました。
 複数の管理者による権限の行使が競合した場合には強弱関係もあります。恭介はこの管理者権限を最大限に利用して
 理樹と鈴を成長させていく環境を整えましたが、真人のように管理者権限を濫用して筋肉革命を起こす事も可能ですw
 A参加者は外部から虚構世界に入り込んだ人間であり、そこでの体験や記憶はある程度現実に影響するようです。
 精神世界という構造上、自己の強い思いが虚構世界に影響を及ぼす事もあり、自身が世界を構築して管理者となる事も
 可能。また世界の仕組みを理解して現実世界を認識できるし、基本的に自由な行動が可能です。
 理樹や鈴、小毬たちヒロインは参加者という立場で虚構世界を生きています。
 Refrainラストで恭介が去った後にも関わらず時間が動き夕焼けになった虚構世界は、最後に残った小毬が管理者権限を
 引き継いで成り立っているからかもしれません。
 B構成要素は虚構世界の物理的存在――建物や植物、動物、人間など虚構世界の構築によって生まれた存在です。
 構成要素の人間はいわゆるNPC(ゲームでプレイヤーが操作しないキャラ)ですが、虚構世界上、参加者や管理者と
 行動や意思決定の能力(狭い意味での自我)に違いはありません。管理者による干渉は受けるものの基本的には参加者
 と同じ強度を備えた存在です。ループ世界の仕組みに気付いて記憶を継承する方法を得たり、世界の秘密を解き明かして
 管理者になる事も可能です。人間であれば虚構世界が構築された段階で1つの自我が発生して、ループによって自我が
 破壊・再構築される表記はないので、その点では現実とリンクした本人となんら変わることはなさそうです。
 また自我を備えているのでNPC個人の能力次第では参加者や管理者を出し抜く事もできそうです。
 参加者・管理者と構成要素の違いは現実世界とリンクした本人であるかどうかという点。あくまで構成要素は虚構世界上
 の存在でしかないので虚構世界が消えれば構成要素も消滅してしまいます。虚構世界の学校が消えても現実の学校に何の
 影響も及ぼさないように、虚構世界の佐々美や佳奈多と恋愛しても現実世界の佐々美や佳奈多の心に変化はありません。
 影響を及ぼしているように見える場合は他の要因によるものか、作中描かれていない部分に起因しているはずです。


 ※ 世界構造の解釈の前提

 世界の構造を考える場合に論争の的になりそうなものは、@構成要素に狭義の自我が観念できるか、A現実世界の本人
 との関連性、B虚構世界への参加要件の3点に絞られそうです。レビューではこの枠内で考察するようにしています
 (というよりも最初に仮説の限界・可能性の捨象について論じなければ、アトランダムな場当たり的解釈の羅列になって
 しまい、一番重要な構造的理解に至らないので)。当たり前ですが、この世界構造を作り出したシナリオライター
 が構造の100%を理解または把握しているということは論理の天才でもない限りはほとんどありえず、文章構造として
 現れた段階で主観的記号から客観的記号に生まれ変わり、シナリオライターの意図しないところで論理が演繹されて、
 それが作中の表記との間に矛盾を生み出すということも十分にありえます。したがって作中の表記であっても論理構造
 と違背してしまう要素は情報の確実性の強度順に捨象していくなどの自己処理を加えながら、基本的にはボトムアップ
 アプローチで組み上げています。考察の対象は作中の表記・表現のみを対象としているので、その他の外部情報は
 まったく考慮していません。自分の立場としては以下のとおり。
  @虚構世界の構成要素に狭義の自我が観念できるか
   >できる。
   >(すでに虚構世界の構成要素は観測者の意識と自我の限界を超えている。)
  A現実世界の本人との関連性
   >虚構世界の構成要素でないならば関連性あり。
   >(作中では一貫して現象的意識の私秘性を心身二元論的に考えている。)
  B虚構世界への参加要件
   >瀕死または虚構世界構築の目的となる人間
   >(虚構世界の限界・射程について謙抑的な立場をとる。可能な限り "何でもあり" を防ぐ。)
 たとえば、B虚構世界への参加要件に対して非謙抑的であれば、佳奈多が現実とリンクした本人として虚構世界に参加して
 いると考えることができますし、A現実世界の本人との関連性を認めなければ、虚構世界の共有性や奇跡自体を否定する
 現実的な見解になり、@虚構世界の構成要素に狭義の自我が観念できないとすれば、虚構世界はリトルバスターズのメンバー
 の記憶のみに基づいて作られている事も考えられます。
 一応それぞれの組み合わせが排他的論理構成になるように整理してみましたが、多分もっといい基準立てがあると思います…。
 Bにつていはほとんど限界論なので、権威に訴える論証等(主に新設定の暴露)、論理構成以外の要素に対して脆弱なので
 なんとでもなりそうです。
 上記3つの論点で異なる立場をとる場合や、そもそも論として基準の立て方が違う場合には、ここで書かれているレビュー
 や考察はほぼ無意味になるので、飽くまで考え方の一例として捉えて頂ければ幸いです。




■ シナリオの構造



 この世界では恭介が世界にリセットをかけることができます。
 基本的に世界にリセットをかける(プレイヤー視点ではルートをクリアしてもう一度最初からやり直す)
 のは、恭介が理樹を見て十分と判断した時です。来ヶ谷ルートのような例外もありますが…。
 これを何度も繰り返して理樹と鈴は恭介の計画通り、精神的に成長していくことになります。
 理樹は虚構世界において個別のヒロインルートで彼女達の問題を解決していきますが、やがて最後に
 鈴2回目ENDに行き着きます。これは恭介が鈴を成長させようと強引な手段を用いた結果、失敗して
 しまい鈴のトラウマを呼び醒まし心に大きな傷を残して、それは次の世界である『Refrain』まで持ち越されます。
 この結果を見て真人は恭介を黙認し、謙吾は恭介のやり方に反発します。こうしてバラバラになった
 リトルバスターズを理樹がもう一度立て直そうとするのが『Refrain』ルートです。


■ シナリオの流れ



 バス事故→理樹による個別ヒロインルート→理樹・鈴逃亡→Refrain→理樹と鈴のみ生存――
 というのが本来の流れでしょう。そこから全員生存エンドとその後に続いた可能性のある佐々美ルート、個別ルート内の
 いずれか任意のところで沙耶ルートが入るといった感じでしょうか。ヒロイン個別ルート相互の関係は並列的なもので、
 虚構世界内の時系列上の先後はないようです。沙耶に関しては恭介の虚構世界の消滅と同時に沙耶の世界も同時に幕を
 閉じた事になります。

 小毬は理樹と鈴の虚構世界での行動を見つめてそれを絵本として残し、シナリオの構造について象徴的に示しています。
 これについて多少ややこしいですが小毬が絵本で書いた、男の子が8人の小人の悩みを解決して小人は森から出て行く
 という描写について、ヒロインがそれぞれに抱える悩みを解決したから虚構世界を出て行ったと考えるには多少ロジック
 に歪みが出る気がします。
  「8人で理樹と鈴を強くするために虚構世界を作ろう!」「おー!」
  「お、理樹によってヒロインの悩みが解決したぞ。」
  「それじゃ私は悩みが解決したから虚構世界から去りますね。」
  「ちょ…っ、おま… 理樹と鈴を強くするために虚構世界作ったんじゃ――」
 ――というわけではなく、鈴が1回目のENDを迎えて2回目のENDに入る時点で、小毬を除くヒロインは理樹も鈴も十分に
 強くなったと判断して後の事を恭介たち初期メンバーに任せて安心して去っていったのでしょう。またはヒロインが
 抱える悩みを理樹に解決させた時点で以後理樹の成長の糧として役立つことはないので恭介がドロップアウトさせたとも
 考えられますが、小毬が虚構世界に残り続けることができた事を考慮すれば虚構世界からの退場は自主的なものだった
 はずです。また、個別のヒロインルートでヒロインが他のヒロインのバックグランドについて言及していたりするので、
 小毬以外のヒロインの虚構世界脱出のタイミングは同時と考えられます。

 しかし鈴と一番仲の良かった小毬はこっそりと虚構世界に残り続けて虚構世界の最高権限者である恭介が去った後に
 その地位につき鈴を呼び止めて最後のお別れと願いの叶う星を託しました。その星のおかげなのかどうなのか、
 理樹はナルコレプシーを克服して本来なら理樹と鈴しか助からなかったはずの運命から抜け出して、全員を救い出す
 という奇跡を成し遂げました。



シナリオ

 個別ルート間で差が激しいように感じました。素晴らしいと思うものがある一方で、無い方がマシとさえ思えるシナリオ
 もあります。飛ばさずちゃんと読むべきは@鈴シナリオ+Refrain、A佐々美シナリオ、B沙耶シナリオの3つ。
 個人的には他のシナリオは特には…という感じです。もう最初から鈴ルート行けるようにしてください…。
 無印からの修正・加筆で一番期待していたのは小毬シナリオだったりしますが、特には変わっていない模様。
 反面、構造的にいかがなものかと思えるクドシナリオの完成度を無駄に上げてしまっているような…。
 佳奈多シナリオのはる&かな物語の変貌ぶりはびっくりでした。


■ 鈴シナリオ+Refrain 106点

 これがリトルバスターズ!のメインシナリオで見所で最高の盛り場!
 言葉は要りません。共感してくちゃくちゃ泣きましょう。特にラストの真人、謙吾、恭介の別れのシーンは最高すぎます!
 友情とは何か、独り立ちとは何なのか、真人、謙吾、恭介の立場がそれぞれ答えを出してくれています。
 そして本当の強さとは何なのかを理樹が教えてくれた気がしました。


■ 佐々美シナリオ 88点



 佐々美と黒猫の最後のシーンに泣いた。

 まさにシンプル・イズ・ベスト。リトバスEX個別シナリオで最高のお話だと思っています。
 舞台設定はある程度凝っているものの、物語としてのシナリオ自体はごく普通。
 が、佐々美と黒猫の別れの部分で惜しみない演出が施されており、読み手を泣かせるという目的において
 かなり合理的な構造をとっていると感じました。
 動物を飼っていた経験のある方なら、さらに補正がかかっている事でしょう。

 お話の時系列はバス事故後、リトバスメンバーが全員生存したエンドの後日談という位置づけ(10/23)。
 黒猫のクロが臨死になってしまい佐々美へ最期にメッセージを伝えるために虚構世界へ佐々美や理樹を
 召喚したという舞台設定です。おそらく現実の佐々美や理樹は普通に眠っている状態で、夢を見るのと同じ
 ように意識だけが黒猫の虚構世界に入り込んだ状態でしょう。
 虚構世界の構造は恭介たちが作り出したものと似たもので、瀕死の者が最期の願いを託して作り上げた
 主体相互による共有空間。恭介たちの虚構世界へ入り込んだ理樹と鈴と同じように、黒猫の虚構世界に
 佐々美と理樹、その他小毬や鈴も召喚されます。

 感想は…黒猫が徐々に弱っていき静かに眠ってしまうまでの描写が最高に泣けました。
 理樹との恋愛絡みは比較的どうでもよかったです。


■ 沙耶シナリオ 82点

 悲しさを漂わせながらも温かみのある本当にいい話でした。
 物語の色とキャラの性格のバランスのとり方といい、クリア後にイヤなものを残さないシナリオといい、センスも
 レベルもハイクオリティ。

 テキスト全体に断定を避ける表現はしているものの、シナリオライターが読み手を誘導したい先は明確なので、
 以下、断定したものとして解釈。
 沙耶(あや)は現実世界では事故によって瀕死の状態(ほぼ死亡確実)で、恭介たちの作り出した虚構世界に
 イレギュラーな存在として入り込みます。恭介としては遊び心から虚構世界を少しいじって理樹の成長に役立てよう
 ぐらいにしか考えていなかったものの、その虚構世界の仕掛け(学園スクレボ)に虚構世界の住人(NPC)以外の
 現実世界の実存的存在である沙耶(あや)が入り込んで、仕掛けの中の "沙耶" のポジションに居座ってしまいます。
 そのイレギュラーな存在に危機感を覚えた恭介は沙耶を屈服させて虚構世界から退場させようとするも、沙耶は
 あきらめずに理樹とともに地下迷宮の探索を続けていくことに。
 理樹との恋愛で最後の1ループだけでもと普通の日常を望んだ沙耶は、虚構世界の最高権限者である時風(恭介)
 と密約して、学園の秘宝に生物兵器を所望し最後は虚構世界からひとり去っていくことを決意します。
 そして時風(恭介)を倒し地下迷宮の最下層に到達した沙耶は生物兵器によって死ぬ事を選ぼうとするも、
 時風(恭介)の計らいによってタイムマシン(または異なる世界に沙耶を転送するもの)も秘宝に設定されており、
 虚構世界の中で沙耶は自分の過去に遡ることに。その世界では沙耶は理樹と幼馴染という事になっており、最後に
 理樹、沙耶、恭介、真人、謙吾と過ごす学園の絵が出てきます。

 そのラストの絵はまるで夢を象徴するように、ぬいぐるみや学食のパンなどが周囲にちりばめられており、現実的な
 描写としてのシーンのように描かれてはいません。絵の中に鈴がいないのは沙耶自身が鈴のポジションを羨ましく
 思っていた事の現われなのか――ラストは悲しい事に沙耶の望んだ夢のシーンでしょう。
 恭介の虚構世界の射程という視点から考えると、恭介は沙耶の記憶を捏造して元から理樹と幼馴染という設定を
 作り出して、虚構世界の1学期だけを沙耶にプレゼントした事になります。
 ただそれでは物語の結末として悲しすぎるのでシナリオライターは、沙耶が別のパラレルワールドで理樹と幼馴染で
 あり、今も幸せな学園生活を送っていると読み手に誘導させる事も意図して、ある程度幅を持った表現で結末を描いた
 のではないでしょうか。

 本当にKeyらしいお話で泣けました。そう、泣けたのですが感動というインパクト以上に馬鹿理樹とバカ沙耶に終始
 笑いっぱなしだったのが何より印象的だった
り。このルートで自分の中で理樹は全キャラ中最高の馬鹿になりました。
 ただ、理樹や沙耶が馬鹿であることが泣かせる話の質を劣化させる阻害要因としては働いていない感触なので、
 馬鹿理樹ルートでも普通理樹ルートでもそんなに差異は感じませんでした。
 あとこの世界の構造であれば、沙耶の存在をリトバスメンバーの世界と切り分ける必要はなかったように思えます。
 つまり最初から沙耶がリトバスのヒロインたちとある程度絡んでいっても作品の世界の構造を壊すことにはならない
 はずです。まぁ単純に自分が沙耶と他のヒロインの絡みを見たいだけですが…。


■ 佳奈多シナリオ 73点



 描くべきものを描いた完成度の高い葉留佳シナリオ。

 葉留佳ルートにおいて欠落していた和解の描写の土台部分にあたる過去の物語が丁寧に描かれており、
 読み手がシナリオのロジックや流れを理解しやすいように書かれているが素晴らしい。
 というよりも、そもそもこの土台部分を抜かして本来の葉留佳シナリオは成り立たないはず。
 正直な話、最初から葉留佳シナリオでこれをやっておけば、2つもシナリオは不要だったように思われます。
 むしろ、この完成度の高いシナリオがあるせいで葉留佳シナリオは無い方がマシなように感じました。
 葉留佳シナリオと同じライターなのかどうなのか…あまりに完成度も志向性も違っているような印象。
 もちろん、こちらの方がすばらしい!

 まず前提としてバス事故に巻き込まれていない佳奈多は虚構世界(本作の物語)に現実とリンクしないNPCとして
 登場している事になります。葉留佳との和解や理樹との恋愛はすべて虚構世界だけで完結する閉鎖的イベント
 であり、虚構世界のNPCたる佳奈多が現実世界の佳奈多に影響を及ぼすことは一切ありえません。
 と言っても、その事が即座に現実世界における姉妹の和解を否定するものではなく、姉妹の確執問題の構造上、
 現実世界においても葉留佳と佳奈多は和解する事になります。
 作中で強調されているように両者の確執問題は、葉留佳が佳奈多を一方的に敵視する事で氷解できずにいる
 だけなので、この確執問題の解決において佳奈多には主体的役割が必要とされていません。
 ゆえに佳奈多は現実とリンクした本人である必要がなく、葉留佳のみが精神的成長を遂げれば必然的に
 現実世界で姉妹は和解する事ができる構造になっています。とはいえ、事故に巻き込まれた妹をみて佳奈多の
 心に何らかの変化が起きた事も和解の一因となりえたと思いますが…。一方で虚構世界での理樹と佳奈多の恋愛は、
 現実世界の理樹と佳奈多の恋愛と因果関係を持つことはありません。

 虚構世界のNPCである佳奈多はその存在自体が葉留佳の精神成長を助けていると言えます。
 つまり葉留佳は虚構世界でNPCを媒介して半ば自己完結的に精神成長を遂げた事になり、葉留佳という主体から見て、
 佳奈多は葉留佳の精神発達上の鏡像として機能している事になります。
 あまり好きな考え方ではありませんが、葉留佳ルートと佳奈多ルートにおける佳奈多の性格や行動の差異
 というのはそのまま葉留佳の内心に対応するものであり、葉留佳ルートでは葉留佳の否定的鏡像が佳奈多として、
 佳奈多ルートでは肯定的鏡像が佳奈多としてNPCに投影されたものかもしれません。

 現実世界における姉妹和解の取っ掛かりとして病院のベッドで眠る葉留佳を佳奈多が見守るシーンが軽く描写されて
 いますが、個人的には現実世界における姉妹の和解シーンも見たかったところでした。もちろん、虚構世界で精神的
 に成長した葉留佳であれば虚構世界での葉留佳シナリオよりもソフトランディングに問題解決しているでしょうが、
 虚構世界の出来事をある程度懐古するような形での二人の確執が氷解する絵が見たいとも思ったり…。
 作中では最初の敵対関係、和解後のまだぎこちない姉妹関係、佐々美シナリオの慣れた感じと3段階の情景がありました。

 葉留佳シナリオを消してこの佳奈多シナリオだけがあれば最良形のように感じました。


■ 美魚シナリオ 68点

 良くも悪くも非常によく練りこまれた美しいシナリオ。
 文学的なテーマを匂わせながらもその奥に分析心理学的な構造を隠して作られているあたり、
 シナリオライターの構成力はかなりハイレベルです。ただ、演出なんかはダメダメ。
 表のトリックは若山牧水で裏のトリックはユングのアーキタイプっぽいカンジ。

 若山牧水の和歌である『白鳥は哀しからずや空の青、うみのあをにも染まずただよふ』
 という和歌。『青』と『あを』で別の意味を載せており、これについて本編では理樹の視点から
 ひたすら説明しています。
 『青』とは一人でいる美魚の世界、『あを』とは理樹と一緒にいる世界、その間にある空白は
 現実に存在できない世界です。そして、海の青に染まる存在である魚が美魚であり、どちらの
 "青"にも染まらない存在である白鳥が美鳥を意味しています。

 美魚は牧水の歌を美鳥への贖罪の意味で口にしています。
 つまり、白鳥(美鳥)は、海の青(一人でいる美魚の世界)にもそらのあを(理樹と一緒にいる世界)
 にも染まる(生きる)事ができず哀しくはないだろうか、という意味です。

 一方でユングのアーキタイプの1つである"シャドウ"を意識したような構造にもなっています。
 シャドウ(影)とは、自己同一性の確立で補完的な役割を果たす人格の一側面で、普段は表に
 でない抑圧された顔、隠された顔を意味するアーキタイプ(原型)です。
 表に出ている普段の人格が美魚、それとはほぼ正反対の明るい行動的な人格(影)が美鳥。
 美魚が『カゲナシ』と表現されて、影を持たない人間という設定にされているのは、美魚が昔、
 薬物治療で美鳥(影)を失ってしまった事に由来しています。
 ユングの提唱する人間の人格形成過程では、影の存在は必須であり、これらを含めて多くの
 アーキタイプがバランスを保つ事によって人間の自己同一性は確立されていくとしています。
 従って、本人(美魚)と影(美鳥)が独立した状態では、人格は不完全なものであり、1つ
 の人格として確立を得ないために、美魚も美鳥も影がありません。

 美魚と美鳥はそれぞれの自己像について別の主張を展開しています。
 美魚は他者に影響されない孤独な自己が本当の自我であると主張し、美鳥は他者から認識される
 自己像こそが本当の自我であると主張します。この2人の食い違いはそのまま人格形成過程に
 置き換える事ができますが、最終的に美鳥が美魚の中で生き続けるという結末を見せている事から、
 本当の自我とは、他者に影響されない孤独な自我だけでも、他人が認識するだけの表面的自己像
 でもなく、その2つの共存によって生まれるものである、と結論付けています。

 シナリオの構造はしっかりしており、おおーっと感心させられました。
 ただし、これらのトリックは読み手の感動を喚起させる事とは別次元のものであり、ストーリー
 として感動できるかと言えば、結局あまり感動できませんでした。
 つまり、だからどうした、という印象です。
 感動できなかったのは心情描写をあまりに詩的表現や抽象化された比喩、暗喩に頼りすぎているせいで、
 理樹や美魚の生の感情がまるで伝わってこなかったからでしょうか。こういった詩的、抽象的な表現は
 料理のスパイス程度に散りばめるのであって、決してシナリオの主役に上がらせるものではない
 とも感じました。


■ 小毬シナリオ 57点

 無印と比べて大きな変更点がなかった模様。
 綿密に組み上げられた良いシナリオながらも、感動を誘う演出やアイテムの活用があまりうまくない
 せいで小毬ルートの最大値を発揮できていないような印象でした。
やはり泣きゲーで重要なのは
 シナリオではなく雰囲気作りなどの演出ですよ。むしろ泣けるためにはシナリオは単純であるほどいいです。

 小毬の兄は、小毬を現実に向かい合わせると壊れると分かっていたので敢えて、小毬が夢へと逃亡
 する道を教え、それが現在の小毬の足枷になっています。ただ、死んだ小毬の兄もこのままでいいと
 思っていたわけではなく、その伝えられなかった言葉を理樹が伝える事になるというシナリオ。
 この流れの中で、小毬の素敵なもの探しへの意識と絵本が重要な意味を持ってきます。
 花を摘んで持って帰ればいつか枯れてしまうように、素敵なもの探しにはその裏側に必ずつらい、そして
 見たくない部分というのが存在しますが、小毬は過去体験からそれらから全て目をそむける事で自己防衛
 を果たしてきました。小毬の兄もその事を危惧していたものの、死んでしまいその言葉は小毬には伝えら
 れることはありませんでした。そのメッセージを理樹が小毬に伝えるため、そして小毬を救うために
 マッチ売りの少女の絵本を書き上げます。
 最終的にその言葉は小毬に伝わり、絵本には今まで小毬が避け続けた否定的な要素と、それを乗り越えて
 幸せに暮らすという結末が小毬によって付け加えられます。

 ところで分かりにくかったのは流れ星の部分。7個流れた流れ星に小毬は何も言いませんが、8個目が流れた
 時に小毬は違和感を感じ悲しそうな表情になります。流れ星が死者の魂を意味するものであると解釈した場合、
 リトルバスターズ10名中、理樹と鈴が助かる前提では他の8名は死亡=流れ星8個で辻褄が合い、小毬が
 8個目の流れ星に違和感を抱くことはないはずです。
 一方、流れ星が「8人の小人」の話のように、個人の問題解決による虚構世界からの脱出であると考えると
 8個目の流れ星は小毬自身の流れ星であり、自分は理樹によって救われる対象ではない――小毬は自己の
 持つ問題を認識していないのに救われる事に違和感を感じ、そこから死んだ兄のことを思い出しそうになり
 悲しい表情を見せたのかもしれません。個人的には7個の流れ星はリトバスメンバーのものでそこに流れ星を
 みている小毬が含まれておらず、最後の8個目は拓也の魂だったと思ったりしています。

 シナリオは良かったのですが演出が今ひとつだったお話でした。


■ 来ヶ谷シナリオ 45点



 シナリオのメインは世界の構造。

 恭介は理樹が来ヶ谷に一度振られた時点で、理樹が傷つくだけと判断して虚構世界にリセットをかけた。
 しかし、来ヶ谷と理樹はその先を願ったために、恭介が虚構世界の存在を許した範囲である6/20までを
 繰り返していく事になった。繰り返される6/20の世界は来ヶ谷によって作られた世界であり、この世界で登場する来ヶ谷
 と理樹以外の人間は、恭介も真人も全て来ヶ谷によって作られたNPC。しかし、来ヶ谷は世界を長く保つ事ができず、
 恭介の虚構世界の消滅によって生まれた空白――すなわち雪によって侵食されつづけ、来ヶ谷自身も次々と思い出を
 忘れていってしまう。また、来ヶ谷の虚構世界の拘束力が弱まった事によって、理樹は夢を見るという形でバス事故の
 現実に戻ったり、恭介の虚構世界の『みんな』が話をしているのを現実から聞いたりする。
 最終的に来ヶ谷と理樹は、来ヶ谷の虚構世界が終わってもお互いの想いを忘れないためにメールを打ち、現実世界で
 それは再び思い出される――

 細かい日にちの整合は分かりませんがおそらくこのような構造だと考えられます。
 来ヶ谷が『ここは願いが叶う場所』と言っているのは、恭介の虚構世界でも放送室でもなく、恭介の虚構世界が消えた
 後の来ヶ谷の虚構世界の事です。
 来ヶ谷自身は恭介が世界にリセットをかけて、次の虚構世界に行った後、残された世界で恭介と同じようなポジションについて、
 自己の作り出した虚構世界を維持しつづけます。しかし、その虚構世界を作り出した段階で、その世界は永くはもたず
 記憶もともに消えてしまうと分かっていました。それゆえ、来ヶ谷は先が無いのに理樹を受け入れた事に自己嫌悪します。
 リトルバスターズエンドでは、前提として理樹は来ヶ谷との1回目エンドも経験し、虚構世界から現実世界にメールを
 送っています。来ヶ谷はそのメールから虚構世界での理樹との恋を思い出す事ができましたが、鈴とくっついている
 様子を感じ取って、理樹に虚構世界の事を訊かれても寂しく笑うだけでした。
 2回目のエンドでは理樹はちゃんと来ヶ谷との恋を思い出す事ができ、来ヶ谷は秋頃になって理樹に告白します。
 わざわざ時期を秋頃にしたのは1学期までしか存在できない虚構世界と現実世界を明示するためでしょう。

 第一印象は描き方がちょっとばかし薄いせいであまり心に残らなかったシナリオ。
 先が無いと分かりながらも理樹を受け入れるまでの心情描写と演出に厚みが欲しかったです。
 リトルバスターズエンドを見ていない一週目はほとんど伏線といったところか。虚構世界のあり方を知った
 上でシナリオを読んでいくと、そこではじめていろいろなことが分かるような仕掛けになっています。

 といっても感動とは別次元の仕掛けなので、来ヶ谷シナリオ単体で泣ける物語、感動できるシナリオかと言うと
 いまひとつという印象です。ただ、世界観に依拠した部分がバカでかいので厳密には来ヶ谷との恋愛が
 メインのシナリオではない気がします。


■ 葉留佳シナリオ 35点

 シナリオ自体はいいものの、描写に嫌悪感が先行してしまう点と和解の過程が軽視されているのが
 今ひとつという印象。
やはりというか、シナリオライターの価値観に共感できない部分が大きいのですが…。
 葉留佳と佳奈多の確執の描写は見てのとおり過激すぎてバランス自体を崩している程ですが、肝心の姉妹が
 和解する過程がほとんど描かれておらず、形だけのハッピーエンドを見せられた感触しか残りませんでした。
 葉留佳が血液検査をせずに和解した結末は好きなのですが、そこに至るまでに葉留佳と佳奈多はお互いが
 どのように心的距離を縮めて葉留佳は誤解を解消したのか…その最も大事と思われる部分が欠落している
 ので、そもそも姉妹の和解物語として成立しているのか疑問です。一方で理樹と葉留佳の恋愛物語としては
 その過程も緻密に描かれており、葉留佳が誰かに依存しているという心の動きと理樹の役割が明確だったので
 分かりやすかったと思います。

 シナリオの構造のあり方として、最終的に和解するのでその過程でどれだけ酷い描写をしてもかまわない…
 という部分が見え隠れしている作りがどうにも好きになれませんでした。
 物語で大事なのは結果ではなく過程のはずです。これでは感動も何もありません。
 佳奈多の発する言葉自体が葉留佳を傷つけ、その積み重ねが現在の確執につながっているという舞台背景
 があるにも関わらず、最後まで罵詈雑言を吐き続けた佳奈多に対して急に葉留佳が大人になりました、という
 のではさすがにシナリオのロジックが破綻しているように感じます。
 何よりリトバスEXでは佳奈多シナリオで姉妹の関係を過去から遡って描いているので、そもそも葉留佳シナリオ
 自体が蛇足である――リトバスEXに関しては葉留佳シナリオは無い方がマシだと個人的に思っています。


■ クドシナリオ 30点



 物語の完成度は比較的高いですが、シナリオライターのロジック、価値観に疑問が生まれるところ。

 名前の由来や伏線部分の描写が丁寧になったおかげでシナリオの完成度自体はあがったように感じられました。
 特に理樹が選択肢でクド自身がどうしたいか訊いた場合のクドの内心描写のおかげで、明確な葛藤が見て取れる
 ようになったのが大きいです。

 まずクドは母親の安否確認にいけなかった事を後悔し、母親のような立派な "歯車" でない自分を責めています。
 祖国でのクドに降りかかる災難はクド自身が望み、虚構世界で実現させた後悔や自責の念。そしてクドが
 鎖を砕くシーンは恋人たる理樹がクドを支えて後悔からの束縛(後悔そのものではない)を乗り越えるメタファー。
 この象徴的シーン(クドの精神的な成長)によって現実でもクドは、理樹の歯車として立派に存在し、母親の死や
 後悔を背負っても前向きに生きていける未来を示しています。

 …なのですが、物語のテーマはともかくシナリオの流れやロジックに関しては個人的には受け付けないものでした。
 というよりもシナリオのロジックが破綻しているように見えました。

 色々とありますがクドシナリオ最大の問題点は、シナリオライターが意図していたであろう『家族−理樹』の天秤が
 ちゃんとできあがっていない点。
クドがこれから先理樹に会えなくなっても母親の安否確認(家族)に帰国するか、
 安否確認できなくても理樹と一緒にいることを選ぶか迷っているところを、恋人である理樹がクドの背中を押して
 帰国させる――というシナリオを予定していたように見受けられますが、『家族』と『理樹』がトレードオフの関係に
 立つ前提としてクドの生命が無事である事が必要
です。ところが、クドの祖国は政情不安で暴動が発生しており、
 離れ離れになるどころか生命の危機すらある状態。そんな場所に恋人や仲間を送り出すか選択することは即ち、
 生命と他の何かを天秤にかける行為に他なりません。無印リトバスでは、これは舞台設定の組み立てミスだと
 思っていましたが、ルームメイトに美魚を選択した場合の会話を見る限りそうではない模様。
 喋る事ができないライカ犬が人類の科学技術の進歩のために死ぬ事を受け入れていると断定していたり、危険な
 祖国に帰すべき事を理樹ではなく美魚の口から伝えたりしている点、個人の生命に上位する存在を認め、それを
 賞賛する価値観は、テキスト上のスリップではなくシナリオライターの故意のようです。
 それゆえに理樹がクドの生命の危機を無視して帰国させ、結果として現実世界の後悔を乗り越えたエンディングには
 クドが将来の夢を宣言して幕を閉じる派手な演出が用意され、理樹がクドの生命を優先して帰国させずに無力ながら
 そばに居続けるエンディングには煮え切らない絵しか見せなかったようです。
 この演出の差異に自分は嫌悪感を抱きました。
 ただ、美魚のライカ犬の話に関してはともかく、クドが祖国に帰るべきとするアドバイスについては、美魚が虚構世界を
 認識した上で、虚構世界ならばクドに生命の危険がない事から帰国を勧めた――つまり、祖国に帰っても生命は安全
 であるし理樹とも離れ離れにならないと分かっていたから、クドの後悔の根源である帰国を勧めたとも考えられます。
 どちらにしても、最終的な帰国の選択を理樹に委ね、クドを帰国させることで歯切れの良い結末を見せている点では
 シナリオライターの価値観に異なった解釈を持ち込む事はできそうにありません。

 エンディングでは、後悔も背負って生きていかなければならない、でも後悔を背負って生きた先にも日常があるんだ、
 と結論付けておきながら、現実世界の後悔を晴らす形で祖国に帰ったルートよりも、現実世界同様の後悔を背負って
 理樹と乗り越えていく方のルートの結末や演出が劣後しているのはいかがなものか…。
 理樹がクドを送り出して "歯車" の意味について反省したのはクドっていうのはいったい…。
 どうにも鎖のシーンを盛り場にするために、描くべきシナリオ自体が曲げられ本末転倒になった気がします。
 さすがにこのあたりは無印からEXへの修正という形でダイナミックに変える事はできなかったという事でしょうか。
 根本的なシナリオの構造が修正されておらず、ただ物語を補足して派手にしただけなのでイマイチです。

 やはりこの舞台設定を用いた物語であれば、現実世界の後悔から母親の安否確認に躍起になるクドを理樹が止める
 ものの勝手にクドは祖国に帰ってしまいそこで捕縛。母親のように立派な歯車になりたいと思っていたクドは憤慨する
 現地の人間の犠牲になる事を願う。しかし、後悔と自責の念の鎖につながれているうちに理樹に求められている事を知り
 自分の本当の居場所――自分が歯車で居られる場所が理樹のそばであることを悟らされて無事帰国、そして再会。
 現実世界で母親のDVDが届いて、クドは後悔から解き放たれ理樹と一緒に未来を歩き始める――
 という流れの方が自然に感じます。



その他

 言うまでもなくキャラは魅力的です。日常シーンの真人や恭介、馬鹿になった謙吾、理樹、沙耶――
 と共通シーンでは最後まで飽きることなくプレイ続けることができました。また、シナリオの良し悪しに影響されない
 キャラクターが確立されていたのも良かった点だと思っています。
 野球ミニゲームのキャラも面白すぎます。コンボよりも弁当クラッシュにガッツポーズ。
 横に転がるドルジのかわいさは異常。立ち上がって手をフリフリするドルジのかわいさも異常。


■ ベストキャラ

 @棗恭介

  あまりにもカッコよすぎます。(21)でもいいです!一生ついていきます!


■ ベストBGM

 @glassware

  さささテーマのピアノバージョン。
  微妙に漂う寂しさと明るく優しい曲。この曲を聴くと佐々美シナリオの黒猫を思い出して泣けてきます。

 AMission Possible 〜but difficult task〜

  これぞリトバスのテーマという感じでわくわくします。

 Bシンクロニクル

  世界と自分のズレを浮き彫りにさせるようなシーンに流れるBGM。
  雪をモチーフにしたような雰囲気と、どこからともなく現れる不安感を煽りたてるような曲調が印象的です。


■ ワーストBGM

 Sha La La Ecstasy

 リトバスEXメインテーマ。エクスタシー三昧の理樹に対する恭介のささやかな嫌がらせ。
 途中までいい曲だなーと聴いていたところ、コーラスがでてきた瞬間、トマトジュースを鼻から噴出すハメに。
 教会の賛美歌のような雰囲気で「エークスタスィ〜♪」とかもう…。まさに天に昇る心地、忘我体験。



総評

 無印に比べて大幅にレベルアップ!
 しかし、これはもう最初から鈴ルートに入ることができるようにした方がいいと思います。
 見所のルートはRefrain、佐々美、沙耶の3つで、これらは全て個別ヒロインをクリア後という設定である以上、
 個人的にやはり無条件に他人に勧められる作品ではないです。初見の人でも個別ルートのプレイ時間を短縮でき
 ればいいのですが、あまり感動できないシナリオほどテキストが無駄に長く時間がかかるのがなんとも…。
 シナリオライターの美学や読ませたいトリックやレリックについていけない事も多々ありそうです。
 理想は無駄のない佐々美シナリオ。プレイ時間が長いだけなのはマイナス要因に感じました。
 また葉留佳ルートは削ってしまって、はる&かな共通ルートにしたら良さそうだと思ったり。
 EXで本当に修正すべきは小毬シナリオだったと思います。正直、シナリオ自体はいいのにこれはもったいないと
 感じました。一方で切り捨てるべきはクドシナリオと葉留佳シナリオ。葉留佳シナリオは佳奈多シナリオに統合
 してしまえば良さそうですが、クドシナリオは手を加えたことが無駄になっている印象でした。
 経営心理学的に支持を集められるのは弱点の克服による平均化ではなく、長所を伸ばすことによる差別化ですよ。
 いくつかあるうちの1つでも受ければ、それは即ち作品全体の質として評価されますから。

 リトルバスターズ!という作品としては、もうRefrain最高!としか叫びようがありません。
 プレイした人間にしか分からない感動と笑いがそこにあります。
 あとは佐々美シナリオ最高! 馬鹿理樹&バカ沙耶最高! 恭介最高! 謙吾最高! 筋肉最高!

 そして最後に、リトルバスターズ!最高!






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