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もしも明日が晴れならば  (2006年3月28日 執筆)
   


 見どころ:


 つばさ!かわいいよっ!つばさ!



■ 全般

  『KANON』『みずいろ』のシナリオが好きな人なら必ず楽しめる作品。
 シナリオの良さに限って言えばこの2作品よりもうまいと思います。
 開始5分で大体のシナリオ運びに予想がつくものの、王道な展開ゆえの
 ストレートさがキャラの性格付けに違和感無く合っているので、
 『分かっていても泣ける』という状態になります。
 ヒロインの数が4人と絞られており、この小さな人間関係の中でストーリー
 が積み重ねられていくという展開によって、人間模様をかなり濃密に描き出して
 いるところは個人的にすばらしいと感じた部分です。それと同時に明穂の持つ
 バックグラウンドがかなり "ずるい" ので、いくつかのシナリオにおいて、
 『問題の解決=明穂』という部分が目立ってしまいます。
 尤も自分はそれが好きなので全くもって問題ないですが…。

  全体を通して理系の人間が作ったような印象を受けます。とにかくプレイヤーが
 感動できる、泣ける要素を無駄なく完結にまとめて過剰な演出を避けて出してくる
 感じがしました。
 こう考えると、『もしも明日が晴れならば』の良さというのはあたりまえのシナリオ
 を完璧に見せるところにあるのだと思います。

  外したポイントらしいものはないですが、音楽と主人公の性格付けの2点が
 どうにも気になります。



■ ベストシナリオ

  つばさシナリオ

  このゲームをプレイした人なら分かる事ですが、個別のシナリオに関して言及する
 事にあまり意味が無いです。というのも、『個別のシナリオ=人間関係の配置換え』
 であって『もしも明日が晴れならば』で1つのシナリオを共有しており、個別ルート
 の持つ意味はこのゲームの切り口の違いと見る事が出来るからです。ただ、その切り口
 の違いが、ストーリーの表現に大きく関わっているものがあり、そういう意味でつばさ
 シナリオは表現部分においてかなり秀逸であり、個人的に非常に面白く感じました。

  愛する姉と自分の思いの板ばさみ状態からの解決の過程という、至ってシンプルな
 三角関係モノでありながら、客観的に見て一番悲惨な位置関係にあるつばさの視点で
 描く葛藤には、それだけでもかなり深いものがあります。
 そしてこのシナリオにおいてつばさがとにかく足掻くわけでそれがどんどん深みにはまる。
 最終的にそのデッドロックが姉によって解放されるという誰もが予想した結末を迎えます。
 しかし、つばさの足掻き方がとにかくイタイので… というか最愛の姉である明穂の考え
 を裏返すような形で足掻いていくつばさを見るのが、プレイヤーからしてみると泣きたく
 なる展開なので、プレイ中は常にもどかしさが付きまといます。
 そういう印象がプレイヤーの中に濃密に作られた上での、つばさがかかってしまった
 呪縛からの解放なので、その契機が明穂によるものだとしてもご都合主義的な部分は
 全く感じずに素直に感動できました。

  細かい点で考えてしまったのが、ラストのエピローグでつばさが明穂の命日を夏と
 言及した点。明穂を夏の思い出として過ぎ去る夏に重ねるように描いてきており、
 そのまだ終わらない夏の思い出を過ごし、明穂をあの世へと見送ったつばさの口から
 消えた日でなく、死んだ日を命日として明確に言及し、消えた日に対して何も言及
 していない事に違和感を覚えました。確かに命日にお参りして…という場面であれば
 当然のことですが、広い意味を示す『命日』という言葉は使って欲しくないです。
 つばさと一樹にとっての本当の別れの日であり、始まりの日であるのは『消えた日』
 であって、『死んだ日』にはあまり大きな意味を乗せていません。
 シンボルの在り方としては『死んだ日=お墓参り』『消えた日=秋の海辺』なので
 ラストは海辺で麦藁帽子を供えるとかの方が意味を死なさずに済んだと思います。



■ キャラ

  つばさ!かわ(略
 感情豊かでありしかもそれがダイレクトにプレイヤーに伝わってきます。
 エンディングまでつばさがボーダー柄のニーソだとは気付かなかったっす!
 …といっても大体どのキャラもしっかりと描かれているのでみんな魅力的です。

 それと"明穂"のネーミングが微妙にセンスがあると感じました。
 "穂"の連想は"秋"であり、それを嫌って"明"にしていると深読みしましたw
 これはストーリーのバックグラウンドに非常にあっていると思います。




■ 音楽

  微妙です。
 感動的なシーンでは、一部の曲に和食にフォークとナイフを添えるような
 BGMの違和感があり、全体を通して聴いても、夏から秋にかけての独特の
 清涼感と登場人物の間に生まれる暖かみを意識したであろう曲調なのに
 ズレている感じが否めません。
 曲自体はいいので好みのわかれそうな部分です…。



■ まとめ

  『KANON』『みずいろ』『君が望む永遠』…。
 このあたりの泣き属性のゲームのいいところを少しづつ集めてきたような
 作品です。人によっては『みずいろ』のパクリだーとか感じてしまうところでは
 ないかと思いますが、パクリだろうが何だろうがオリジナルよりもクオリティが
 高いならオリジナルを超えた名作です。
 といってもシナリオの完成度は上記のどれよりも高く、キャラのもつ魅力というのも
 『もしも明日が晴れならば』特有なので、シナリオが似通っても独特の作品として
 感じます。

 ムダにエロいという部分も少なく、萌え要素も満載。
 誰にでもお勧めできる泣きゲーです。




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