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SHUFFLE!  (2004年6月28日 執筆)



 見どころ: 色彩

  本作のメーカーのロゴのデザインがすごく気に入って買ってしまったゲーム。
 発売から2ヶ月以上経っていたが初回版が手に入ってしまい、うれしい限りである。
 可能ならば、このメーカーのロゴの美しさについて 500KBほど書き綴りたいぐらいである。
 (参照:http://www.project-navel.com/


■ どんなゲームか?

  ハーレム状態ドタバタ恋愛コメディ。
 ひたすらテンポがよく笑えるお手軽さがステキ。
 でありたい。


■ ストーリーは?

  人間界、神界、魔界の三世界の交流が一般的となった世界が舞台。
 主人公、土見稟(つちみりん)と彼を取り巻く5人の少女たち。8年前の出会いから
 その想いを胸に秘め続け再会した神王の一人娘リシアンサス(通称シア)。
 同じく8年前に出会ったという魔王の一人娘ネリネ(通称リン)。
 幼馴染の芙蓉楓(ふようかえで)、ひとつ上の先輩の時雨亜沙(しぐれあさ)
 神界と魔界が共同で開発した人工生命体のプリムラ(通称リム)。
 そんな彼女たちと少年の織り成すストーリーはこのレビューでは割愛します。


■ 音楽

  Mirage Lullaby (オープニングテーマ)  

  響き的に好きな部類に入る曲でした。
  子守唄か、夢と現実の境界線をイメージして作られたカンジがします。
  公式サイトでもダウンロード可能。


  HappyRun、雨上がりの朝に

  作中の曲はどれも同じに聞こえます。
  その中で敢えて選んでこの2曲が好きです。
  HappyRunは言葉で表せられないキャラの雰囲気をうまく表現した曲です。
  雨上がりの朝に、はシンバルの存在感が強く勢いのある曲です。


■ CG

  ええ。これです。
  このゲームの最大の売りではないでしょうか。すなわち"色彩"です。
  登場人物の服装から見ていくと制服は基調が白、それにクラウディベージュ(明るめのこげ茶色)。
  まさに"土の色"です。そして土色の制服の上にはそれぞれを表したであろう花の色をした髪。
  そのいずれもがVividカラーではなく、飽くまで日の光を意識した彩色であることに注目しました。
  ファッションも奇抜でもなく、自然な服装の中に色の深みと鮮やかさが質感を形作る感じで、
  「普通にあっておかしくない」センスのものが多かったように感じます。
  プリムラの服装の色が成長の過程とともに白色の占める割合が多くなっていくことも見逃せません。
   また本作では登場人物には花や植物の名前が多くつけられています。色彩を語る上では大切なもの
  なので言及しておきたいと思います。

   リシアンサス。それに土見稟が名前をプレゼントしたシアの内面に眠るキキョウ。
  "リシアンサス"はリンドウ科ユーストマ属の花で和名では"トルコキキョウ"と言うそうです。
  形状、色が多様な花であり、本作のリシアンサスの豊かな感情表現に見事にマッチしていると感じ
  ました。"トルコキキョウ"という和名から日本の桔梗とつながりを持った花かと思いきや、そうでも
  ないそうです。一方、日本でも馴染みの秋の七草のひとつに数えられる、桔梗(キキョウ)
  は華やかさでは"リシアンサス"に見劣りするものの、青、若しくは白の淡色(単色)に彩られた
  凛々しい雰囲気には心奪われるものがあります。

  "ネリネ"はヒガンバナ科ネリネ属ですが、"ヒガンバナ"はヒガンバナ科リコリス属の花です。
  "ネリネ"が王族、貴族の花の象徴とされていたのに対して、"ヒガンバナ"は弔事の花として
  のイメージが強く、縁起のよい花とはされていません。
  ネリネのクローンから創られた人工生命体リコリス。悲運の死を遂げた彼女に、鎮魂歌を
  捧げるネリネ。そのような様子を花のイメージと重ねてしまいました。

  "楓"はみなさんご存知のとおり、秋の紅葉 もみじです。
  真っ赤なもみじと同様、"楓"は深紅の小さな花も咲かせます。花弁は小さく華やかさも今ひとつ。
  秋の景色の中でとても身近にありながらも、気にとめて見る事のない小さな花です。

  "麻"(リネン)というと花よりも繊維材として、生活の中で慣れ親しんだ植物です。
  亜沙の髪色が花の色ではないグリーンで描かれているのもこのあたりのイメージからでしょうか。
  リネンは通気性、吸湿性に優れ、夏物衣類として特に重宝されます。花は小さく可憐であり、
  地味ながらもきれいな色合いを小さな花弁に見ることができます。
  明朗快活な外面性格と内面の儚さ、壊れやすさを併せ持つ女性として、作中で描かれている亜沙。
  外面にリネンを、内面にリネンの花を見ることができる気がします。

  "プリムラ"。サクラソウ科・サクラソウ属の花。
  フラワーショップの店頭の説明によると、春の訪れをはじめに知らせる花という事から
  Primus(最初の)が語源となっている花です。英名はプリムローズ(Primrose)。
  ギリシャ神話の花の女神フローラの息子パラリソスの化身であるとも伝えられています。
  ドイツでは「鍵の花」という意味で、この花を城門の鍵穴に差し込むと扉が開いたという
  伝説に由来するそうです。
  神界と魔界の鍵となる存在で、最初に成功した人工生命体。神界と魔界、人間界の開門に
  ついても彼女が関わっていたのかもしれません。
  土見稟との生活のなかで初めて感情を表すことを知り、心を開いていく過程が描かれている
  プリムラ。また本作全編のバックグラウンドにおいても「鍵」となる存在です。

   以上のような花の由来を知った上でヒロインたちの髪の色、瞳の色、服装の色合いに
  注目するとさまざまな「隠れた要素」を見つけ出すことができます。
  個人的に、ネリネルートで最後の屋上のシーンで服装とバックが、ネリネの瞳の色を
  基調にしたものだったことに受けました。リコリスの瞳の色は青色でネリネの瞳の色は赤色。
  リコリスの想いを持って戸惑うシーンではバックは青色に描かれており、リコリスの想いではなく
  ネリネだけの想いとして描かれるシーンでは赤色が基調となっており、見事としか言いようがありません。
  
  …と、以上まで散々大袈裟に書きましたが構図の採り方、場面にあった色彩演出などがかなり秀逸
  なゲームです。このあたりは意識的にどうにかできる部分ではなく、まさにクリエイターのセンス
  に依存する部分だと思いますが、この点、このゲームのCGの構図担当、色彩担当の人はかなりの
  センスの持ち主だと感じました。
  

■ 好きなキャラ

 楓。アニメ見て認識変わりましたw


■ システム

  表情鑑賞モード。
  うれしい機能です。


■ 感想

  ストーリーが見たかった。
  とくに楓ルートがもったいなすぎる!過去編のCGを出してテキスト増やすと、かなりいいストーリー
  になると思えてなりませんでした。あとは土見稟の人物設定をストーリーの前面で押し出していく
  イベントがほしかったところです。
  唯一、ストーリーでよかったのは、プリムラシナリオの終盤での緑葉樹と魔王との賭け。
  魔王の心情描写がうまく、この部分ではぐいぐい引き込まれていきました。
  「一応、あいつの友人なんで・・」という緑葉樹の台詞もストレートながら最高にきました。
  ストーリーに関してはこれだけです。
  残るは上述のとおりです。まちがいなく"色ゲー"です。(イロモノではありません)



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