Steins;Gate (2011年7月22日 執筆)…90点 |
※ 以下、本作のネタバレや重大な情報を含んだ感想・レビューになっているのでご注意ください。 ......................................................................................................................................................................................................................................................... ■ 概要 タイムマシンによる過去改変、定められた悲劇の回避。 シナリオの完成度が非常に高く主人公が魅力的。誰にでもお勧めできるSFの名作です。 米国の未来人ジョン・タイターを元ネタにしておりSERN(CERNじゃないよ!)が悪者になって登場するという熱い舞台設定。 割にラストは個人の悲劇回避と再会という精神的ゴールだったりするので、一部期待通りではなかった点も…。 本作世界設定における世界線の構造は同時並列的でありながら排他的。エヴェレット多世界解釈では世界線は無数に存在し どれも現実の存在であり、世界線を移動した場合はその世界線を見捨ててしまう事になりますが、ここが本作世界設定では 異なる点。世界線移動によって悲劇的結末の世界線もまた再構成されます。 そうでなければ悲劇的結末が放置される事になるので物語上、後味がよろしくないというのが一番の原因か…。 しかし鈴羽シナリオでは、この二者択一性について"思い出"と"未来"のプラスとプラスを天秤にかけていたりするので中々 侮れない世界設定だったりします。世界設定自体はシンプルで誰にでも分かりやすく、無駄に読み手に能動的である事を 求めていないのでデザインとして完成されている印象。世界設定を複雑化して読み手が解釈に困って自滅しているSF作品が 多い中で、本作はやはり完成度が高いです。 ■ シナリオ オカリンとクリスの本筋の他に個別ルートが用意されているものの、基本的には個別ルート独自での意義はあまりありません。 あくまで物語本筋(オカリンとクリス)がメインであって、個別ルートはそこに付随する脇道的なものに留まっています。 それゆえに、無理やり頭数を揃えるためにシナリオに組み込まれた感のある登場人物やルートもあったりしますが、本筋が しっかりしているので読後感としてあまり気にならない部分。 序盤から中盤にかけての展開のテンポや雰囲気の作り方は素晴らしいの一言。ゼリーマンあたりから一気にシュタゲ世界に 引き込まれて、ラウンダー襲撃→タイムリープで最高潮に達しました。おかげで最も盛り上がると期待していた終盤の展開には 若干冴えない感触も…。物語の葛藤部分としてまゆりとクリスの二択が提示された上で、その精神的クライマックスの部分が 割と小手先のテクニックで解決してしまっている点に肩透かしを食らいました。精神的クライマックスはクリスの生存と再会 であり、物理的クライマックスは世界の未来を変えるという部分を期待していただけにラストは展開面で勿体ない…。 特にSERN絡みでは明確なシナリオ上の結論が出されているわけではないので、気になったまま途切れてしまった印象があります。 人間関係の物語としてはオカリンとクリスが最も丁寧。日常会話がそのままラストの再会演出のキーになっているのは 自然であるものの、もう少し派手にアイテムや場面演出を取り入れて欲しいと感じました。どちらかというとラストの再会 までの日常がメインという気もしますし、逆説的には日常シーンでの二人の関係性が感情面で深く掘り下げられているゆえに ラストまでに力を使い果たしたとも感じます。また全体的に感動シーンでの泣ける演出が大人しめだったのが主因とも。 精神的な物語として完成度が高かったのはフェイリスルート。オカリンとフェイリスの物語というよりは、フェイリスの悩み をオカリンを触媒に描いているだけなので、ニュアンスとしては人間関係の物語ではなくひとりの人間の物語。他のルートと 違ってここではオカリンではなくフェイリスが主役になります。過去改変によって手に入れてしまったありえない日々に結局は うまく向き合う事が出来なかった(許されなかった)フェイリスの心情が繊細に描写されています。 ■ キャラ オカリンが最高。フェイリスルートを除いて他ルートは全てオカリンがメインヒロイン。クリスはオカリンの嫁であって メインヒロインではない。どちらかというとクリスはオカリンのシナリオ上のゴールに近い象徴的存在という気がします。 ここまで悩んで頑張ったヒーローも珍しいです。特に普段の中二病患者から選択の余裕がなくなって生の感情を吐露するあたり でヒーロー度数がマックスに達します。オカリンは作中で一番幸せになって欲しいキャラ。 ■ BGM 『Suspicious eyes』が一番シュタゲの雰囲気を想起させてくれるのでお気に入り。 タイトル画面のテーマ曲はふざけたオカリン(鳳凰院凶真)のテーマ曲の印象しかないです(笑)。だがそこがいい…。 以上 |