汝は犯人なるや −ヒント編−
 







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  【生存者】
    直枝理樹
    棗恭介
    宮沢謙吾
    棗鈴
    三枝葉留佳
    来ヶ谷唯湖
    西園美魚
    能美クドリャフカ

  【処刑者】
    井ノ原真人
    神北小毬
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     「うぇ〜〜〜ん、私筋肉になっちゃった…」
     「そうか小毬、感動のあまりに涙を堪えきれなかったんだな。その気持ち分かるぜ。」
     「いやいや、別に吊るし上げられたからって筋肉になるわけじゃないから。」

 どこか満足そうな真人に肩を叩かれながら、人生総悲観と言わんばかりにうな垂れる小毬ちゃん。
 しかし、2回目の投票にして最も犯人像から遠い人間である小毬ちゃんが吊るし上げられたのだ。
 言うまでもなく犯人グループの仕業――早くなんとかして小毬ちゃんのかたきを討たなければ…。

     「さて、小毬が真人軍団に入ったところで会議を再開しようか。」
     「わたし、真人軍団なんてやだーっ! かわいくな〜い〜」
     「諦めろ、おまえはすでに真人の筋肉空間に足を踏み入れてしまった。前門の上腕二頭筋、
      後門の大腿筋。引くも遅筋、進むも速筋だ。乳酸がパンパンになるまで筋肉祭だぜ。」
     「いやいや恭介。負けたら真人軍団強制加入ってイヤすぎるよ…」

 そうして小毬さんが話し合いのテーブルからはじき出されてゲームは再開する事になった。








汝は犯人なるや
−ヒント編−







 【第3回会議】


     「神北さんはこの中で一番、犯人である可能性が小さな人です。それが目撃者3人に先立って排除された
      ということは――」
     「犯人グループが小毬ちゃんを嵌めたんだ。」

 みおの言葉につなげて説明する。
 やはりこの点についてはみんな分かっているのだろう。あたしの言葉にほとんどのメンバーが頷いている。

     「ふふ…恭介氏。これは芝居と言っていいのか悪いのか――」
     「ん、来ヶ谷、どうした?」
     「ところで諸君、3人の目撃者の情報を今一度整理してみたまえ――これだけで犯人をひとり見つける事ができる。」
     「なにっ! ホントなのか!?」
     「わふ〜っ!?(>ω<) 全然気付かなかったのですっ!」
     「………!」

 来ヶ谷の言葉にあたしもクドも驚いた表情を隠せずにいた。
 周りにはそれが分かっていたという表情の者や、ハッとした顔つきに変わった者までいる。
 しかしまさか、この3人の目撃情報だけで犯人がひとり特定できるなんて…。
 あたしは3人の目撃情報を思い出した。

 はるかは犯人が恭介と謙吾だと言っている。
 恭介は犯人が理樹とクドだと言っている。
 謙吾は犯人をみおだと言っている。

 つまり、目撃者と犯人の組み合わせを整理するとこうなのだ――
 あたしはサイフからレシートを1枚取り出してボールペンで書いていく。

 はるか説:  恭介、謙吾、【  】
 恭介説:   理樹、クド、【  】
 謙吾説:   みお、【  】、【  】

 …だけど3人全員までは分からない。
 それに誰かひとりの説が正しいとして残りのふたりは嘘をついている事になるのだから――

     「そうだっ! 無実グループの人は嘘をつかない! 本当の目撃者以外は犯人だった…!」
     「ふふ、鈴君。理解したようだな。」

 静かに笑みを湛える来ヶ谷。どうやらまわりのみんなも同じ人間を投票するような雰囲気だ。
 なんて簡単な事だ。目撃者以外は犯人だなんて分かっていた事じゃないか!

 はるかが目撃者だったら、犯人は恭介と謙吾。
 恭介が目撃者だったら、犯人ははるかと謙吾。
 謙吾が目撃者だったら、犯人ははるかと恭介。



     「10分よ。みんな私にメールを送ってもらえるかしら。」


          :
          :




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 【第3回投票結果】

    棗恭介    7票
    直枝理樹   1票
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     「棗先輩が吊るし上げられました。」
     「く…っ! 適当に犯人をでっち上げたのが裏目に出たか…」
     「う…、なんで恭介は最後に僕に1票、投票するかな…。」

 その投票結果に無念そうに恭介は唸っていた。
 もし恭介が本当に目撃者だったら、犯人は理樹、クド、はるか、謙吾の4人という事になってしまう。
 これは犯人グループが3人であることと矛盾するから、恭介は嘘をついていた犯人で確定なのだ。


     「それ見ろ。一番怪しいのは恭介だと言ったろう。」
     「あはは、次は謙吾くんを排除する番ですヨ。」
     「これで犯人は残り2名ですね。」

 得意げな顔の謙吾とはるか。みおの言葉にあたしは頷く。

     「いえす! あい、あむ、いのせんとっ!」
     「良かった…。何とか犯人に仕立て上げられずに済んだみたい。」

 恭介に犯人扱いされていたクドと理樹のふたりも一安心といったところか。
 そんな中、来ヶ谷がポツリと一言呟いた。

     「犯人グループもやるな。恭介氏が犯人とまわりに確定させられた時点で容赦なく仲間である恭介氏に
      票を投じるとは…。これは事前に相談しての事か、さもなければ――」

     「来ヶ谷。確かに俺は排除されたが、まだ犯人はひとり…またはふたり残っているぜ。必ず俺の意志を
      ついでチームを勝利へと導いてくれるさ。小毬にワッフルを買い与えるのは無実グループって事さ。」

 片手を挙げて来ヶ谷の横をすっと通り過ぎ、部屋の隅に移動する恭介。
 その姿に来ヶ谷はふっと笑みを返して見送った。


     「うっふふ〜。ワッフルを食べてしまった恭介くんへ♪ こまりちゃんのおしおきターイム!」
     「い、いや待て。小毬。これにはちゃんとした事情があってだなぁ――」
     「おんどりゃぁ〜〜〜♪」
     「ちょ…っ!? そんなエロティックに激しく――ぎゃぁぁぁーーっ!?」



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  【生存者】
    直枝理樹
    宮沢謙吾
    棗鈴
    三枝葉留佳
    来ヶ谷唯湖
    西園美魚
    能美クドリャフカ

  【処刑者】
    井ノ原真人
    神北小毬
    棗恭介
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          :
          :


 【第4回会議】

     「では今から10分間。会議を始めてちょうだい。」
     「あっちは凄い事になってるな…。」
     「神北さんが恭介さんをリボンでボンレスハムにして、横面を足でグリグリと…」
     「その割に恭介は何だか嬉しそうだね。」

 とりあえず、変態兄貴は放っておいて、あたしはさっきの事を考える事にした。

 恭介は犯人のひとりだった――そうなると目撃者ははるかか謙吾のどちらかなのだ。
 もし、謙吾が本当の目撃者だったら犯人の3人はキッチリと決まって、恭介、みお、はるかになる。
 一方はるかが本当の目撃者だとしたら犯人は恭介、謙吾、それと謎のひとりになる。
 つまりこうなのだ。

 謙吾説:   恭介、みお、はるか
 はるか説:  恭介、謙吾、【  】

     「むむぅ、はるかが正しければ謙吾に投票するのが一番――
                 だけど謙吾が本当の目撃者だったとしたら、はるかかみおに投票するべき。」

 腕を組んで首をかしげるあたし。視線を上げるといつの間にかみんなも話を止めて誰に投票すべきか黙考していた。
 ふと顔を上げると隣に座っているクドの携帯の画面が目に飛び込んできた。

     "そうだね。今回も同じ人に投票しようよ。(^^)
                  2回目の投票でもちゃんと同じ人を投票したみたいだし、クドは信用できるよ。"

 それは理樹からのメールだった。

 残念ながらクドから理樹へ送ったメールは見る事ができなかったので、ふたりが誰に投票するつもりか分からなかった。

     「ん〜〜〜。どうするべきか…」
     「鈴、迷うな。この女が嘘をついているに決まっているだろうが。」
     「何を〜〜〜っ! ふんどしの似合いそうな男を信用すると絶対にヤケドするのデス!」

 冷静に話す謙吾とむきーっと怒るはるか。

     「鈴さん。確かに投票を絞るならこの2名でしょうね。」
     「みおもそう思うか…」
     「そうだね。でもどっちが嘘をついてるか分からないし、僕もまだ迷ってるよ。」
     「………」

 頭をかきながら理樹は笑う。
 ――そんなはずはない。すでに理樹はクドと一緒に投票するべき人間を決めているのだ。つまり理樹の仕草はフェイクだ。
 ここは真偽の合戦場。安易にまわりの意見や発言を信用してはならないのだ。

     「安心するがいい。私は決してかわいい女の子に投票したりしないと言っただろう。」
     「私の立場からは投票すべき人間がひとりしかいないので迷いませんが。」

 来ヶ谷とみおはすでに誰に投票すべきか決めていたようだ。
 さて、はるかと謙吾…どちらがより信用できる人間なのだろうか――

     「ナニナニ鈴ちゃん? 私の顔に何かついてるカナ?」
     「………(ジト目)」
     「おおーっ、これは旦那の浮気を疑う女の目…! そこまでお疑いならコレでどうだぁーっ!ズビシっ!」

     "鈴ちゃんと同じ人に投票っ! by はるちん"

 差し出されたはるかの携帯の画面には、投票をあたしに委任する内容の文面。

     「くっ! 三枝め。そんな手段で鈴を信用させようとするとは…!」
     「いい手段だが葉留佳君。キミは普段の自分の行いを一度思い返したほうがいい。」
     「ふっふっふ。これで鈴ちゃんのハートを鷲づかみ! さぁコレで私と鈴ちゃんは運命共同体!
      大型客船に乗って全速力で氷山に衝突してマイ・ハート・ウィル・ゴー・オンなのですヨ!
      当然死ぬのは男ひとりっ!(><)」
     「そこで俺を指差すな!」

 はるかは票まであたしに委任したのだ。普通であればもう1人の目撃者、謙吾に投票するものだったのだろう。

     「よし。はるかの想い、確かに受け取った。」
     「待て鈴っ! 早まるな――!」

 謙吾を無視してあたしは手早くメールを打つと佳奈多に宛てて送信した。


          :
          :


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 【第4回投票結果】

    三枝葉留佳  5票
    宮沢謙吾   2票
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     「――三枝葉留佳が吊るし上げられました。なお自分に投票する事になった馬鹿が1名いるわ。

     「鈴ちゃんの鬼ぃぃぃ〜〜〜〜!! 悪魔ぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」
     「悪いな、はるか。この世は非情なのだ。」

 日頃の行いを考えると謙吾を信用した方が良さそうだった。…むしろはるかと誰かを比べると確実にはるかが負ける気がするが。
 現にあたしと同じ事を理樹とクドも考えていたのかもしれない。

     「ま、当然の結果だな。」
     「それじゃ謙吾が本当の目撃者って事になるね。」
     「わふ〜っ 目撃者サマ〜♪」

 クドがなにやら謙吾を崇め奉っていた!

     「ふふふ。どうやら西園女史は絶体絶命らしいな。」
     「そうですね。三枝さんにとって本当の運命共同体は私だったのですが…。
      私が彼女のメッセージに気付いてここまで来たとしても、やはり最後は運になってしまいました。」

 来ヶ谷の呟きに残念そうにみおがため息をつく。
 考えてみれば確かにそうなのだ――
 はるかが目撃者である事をまわりから否定されれば、必然、本当の目撃者は謙吾という事になる。
 そうなれば謙吾によって犯人だと言及しているみおは、犯人という事になってしまうからだ。

 7名のうち5名が謙吾を真の目撃者と認めた以上、次の投票で排除される人間は言うまでもない。

     「安心したまえ――とは言えないが、お姉さんはかわいい女の子を投票したりはしない。」
     「おそらく、このままではどちらにしても同じ結果でしょう。いえ…期待薄ですが、もしかしたら――
      たった今、この時点で私を救える可能性を持った人は2名いらっしゃるのですから…。
     「私を除いて、か。それはキミが犯人で救われるという意味か、無実の人として救われるという意味か…どちらかな?」
     「来ヶ谷さん。あたなは分かっていながら楽しんでいる悪い人です。」

 みおのその言葉に来ヶ谷は静かに笑うだけだった。
 やがて、そうこうしてるうちに5回目の投票が始まろうとしていた。

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 【第5回投票結果】

    西園美魚   4票
    宮沢謙吾   2票
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     「――西園美魚が吊るし上げられました。」
     「…ショボン。」

 みおは排除された。あたしもみおに投票したから予想していた事だ。
 みおが部屋の隅へ移動して、残るメンバーであるあたし、謙吾、理樹、クド、来ヶ谷の5名が輪になった。


 【第6回会議】
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  【生存者】
    直枝理樹
    宮沢謙吾
    棗鈴
    来ヶ谷唯湖
    能美クドリャフカ

  【処刑者】
    井ノ原真人
    神北小毬
    棗恭介
    三枝葉留佳
    西園美魚
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     「これで犯人グループである恭介、三枝、西園が排除されて、無実グループの者しか残っていない訳だが――」
     「ねぇ、二木さん。これで無実グループの勝ちなんじゃないの?」

 謙吾の言葉に続けるようにして理樹が佳奈多に訊ねる。

     「いいえ、まだ続行よ。さっさと話し合って投票する人間を考えなさい。
     「最後のひとりまで続けるんだね。まったく、硬いんだから…」
     「ふふ…何か言ったかしら、直枝理樹?」
     「いやいやいや、何でもないってば!」

 ちょっとトゲを覗かせた佳奈多のイントネーションに、理樹は慌てて首を左右に振りまくる。

 ――あれ、でも元々そんなルールだったか?
 だが佳奈多が続行と言っている以上、最後まで続けるルールだったのだろう。なら、あとは消化試合だ。
 …それにしても恭介が最初にミスをしたおかげで犯人がどんどん見つかってしまったのだ。
 このゲーム、あたしたちの勝ちだ。部屋の隅で手を振る小毬ちゃんに手を振り返して笑う。



     「本当に恐ろしいな、恭介氏は――」



 勝利に酔っていたあたしの心に墨汁をこぼすような一言。
 振り返るとちょっと離れたところから来ヶ谷があたしたちを眺めていた。

     「なんだ来ヶ谷、気味が悪いぞ。」
     「ふふふ。キミのお兄さんはとんでもない人間だったようだ。リトルバスターズのメンバーの個性や特性、
      そういった事を完全に把握した上で計画を立てたのだろう。しかも運まで恭介氏に味方している。」
     「む、意味が分からん。」
     「正直、面白ければ私自身の勝ち負けはどうでもいいと思っている。よって面白くなると判断したので、
      これからお姉さんは独り言を言ってやろう。」
     「…?」

     「犯人グループにとって1回目の投票は本当に運だった。2回目の投票で小毬君が排除された事で
      一気に情勢が傾いた。3回目の投票では恭介氏が吊るし上げられたが、恭介氏は何一つミスを
      しなかった。
それどころか完璧な仕事をやってのけたと言ってもいい。」

 そんなバカな――だって恭介が目撃者として犯人を適当に言ったおかげで恭介の嘘がバレてしまったのだ。
 それなのに来ヶ谷は恭介が何一つミスをしていないだなんて――

     「2回目の投票の時点で目撃者を名乗る人間は3人いた。目撃者を名乗る3人はそれぞれ犯人の名前を挙げた。
      自分が無実だと分かっているのに目撃者を名乗る人間から、おまえが犯人だ、と言われたらどう思う?
      仮に私が無実だとして目撃者を名乗る人間から犯人呼ばわりされたなら、その目撃者が偽物と分かるから
      真っ先に投票で吊るし上げるだろう。


 それはそうだ。
 恭介は理樹とクドを犯人だといい、クドは理樹に恭介を投票しようとメールを送っていた。無実の自分を犯人呼ばわりした
 のだから恭介が絶対犯人だと分かるからだ。同じように謙吾に犯人呼ばわりされたみおも謙吾を、はるかに犯人呼ばわりされた
 恭介と謙吾もはるかに投票したに――

     「――!!」

 それはおかしい。
 だって2回目の投票で排除されたのは小毬ちゃんなのだ。これは犯人グループ3人が結託して行わなければ不可能!
 ちょっと待て。2回目の投票では果たして誰が誰に投票したのだ?


     「…と、独り言が過ぎたな。だが最後にひとつだけ勝つためのヒントだ。
               ――あわれなピエロを今すぐ探し出して真実を突きつけてやれ。次の投票が最後のチャンスだ。」


 それだけ言い残すと来ヶ谷は、はっはっはと笑いながら歩いていってしまった。
 ピエロ…? ピエロってなんだ? それは踊らされているって事なのか?
 第一、もう無実グループの勝利は決まっているのだから、来ヶ谷が何をしたいのか分からん。
 とりあえず、あたしはさっき気になっていた2回目の投票結果について見直してみる事にする。

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 【第2回投票結果】

    棗恭介    2票 ← (  )、(  )
    宮沢謙吾   2票 ← (  )、(  )
    三枝葉留佳  2票 ← あたし、小毬ちゃん
    神北小毬   3票 ← 【  】、【  】、【  】
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 これはガチ。これに目撃者が謙吾、犯人グループが恭介、はるか、みお。
 犯人グループが小毬ちゃんに投票したのだから――

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 【第2回投票結果】

    棗恭介    2票 ← (  )、(  )
    宮沢謙吾   2票 ← (  )、(  )
    三枝葉留佳  2票 ← あたし、小毬ちゃん
    神北小毬   3票 ← 【恭介】、【はるか】、【みお】
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 うん。はるかは "みおちんと同じ人に投票します" と投票したのだからこれは理にかなっている。
 あ、それから2回目の投票で佳奈多は、「自分に投票している馬鹿はいない」と言っていたから――

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 【第2回投票結果】

    棗恭介    2票 ← (謙吾)、(  )
    宮沢謙吾   2票 ← (  )、(  )
    三枝葉留佳  2票 ← あたし、小毬ちゃん
    神北小毬   3票 ← 【恭介】、【はるか】、【みお】
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 謙吾は恭介に投票した事になる。…よし、問題なし。
 あと残っているのは、来ヶ谷、理樹、クドの3人。
 残っている投票先は恭介と謙吾だけど、来ヶ谷は絶対に男の名前を書く、という点で矛盾はないな。

     「あ、そういえばクドは理樹にメールを送っていたな。」

 "恭介さんが犯人なのです! 一緒に恭介さんに投票です!" という内容のメール。
 クドと理樹は恭介に犯人に仕立て上げられ、ふたりは協力して恭介に投票したはずだ。だから――




     「…………………………………………あれ?」




 もう一度よく自分の書いた文字を見つめてみる。
 いや、間違いない。どこにも書き間違えなんてない…!
 嘘をついた? いや、犯人3人は確定しているのに無実の人間がわざわざ嘘をつくなんて――
 それに相手が提案を了承したとは限らないし…

     「いや、仮に了承しなかったとしても、この相手にわざわざ投票する利益がない。」

 来ヶ谷の言う通り、目撃者を名乗る人間から犯人呼ばわりされたなら、その目撃者が偽物と分かる。
 犯人かどうか分からない人間と確実に犯人と分かる人間…投票するならどっちだろうか?
 この時点でふたりには犯人と断言できる人間がお互いひとりしかいないから、これはおかしい。

     「――もし、犯人がこの3人じゃなかったら…」

 もしこっちが嘘をついていたら、犯人はこうなるから………佳奈多の言ってた事に矛盾してありえない。
 だけどこっちが嘘をついていたとしたら犯人はこの3人になってしまう。
 そもそもこんな状況を作ったのって――



     「あ…あぁっ!! きょ、きょ、きょーすけっ!!」



 机をダンッと叩いて立ち上がる。
 しまった!あたしの立場なら2回目の投票結果をみた時点で本当の犯人が誰か分かっていたのだッ!
 本当に恭介はテキトーに犯人をでっち上げたワケじゃなかった…!
 すべて計算尽くの発言――! みんな恭介の本当の意図に気付かず、嘘を看破できた事に満足させられていただけ…!
 だけどルールを作る段階で、たったひとつのミスを恭介は犯しているはず。

     「うわっ、鈴、どうしたのさ?」
     「…なんだ?何かあったのか、鈴?」
     「わふっ!? ビックリしたのです…」

 理樹、謙吾、クドが驚いたようにあたしの方に顔を向ける。
 部屋の隅では小毬ちゃんに簀巻きにされた恭介がニヤリと笑い、その横で真人も不敵な笑みを浮かべている。
 部屋を見渡して、その人物を探し出す。

     「………?」
     「………ッ」

 あたしと目が合ってもいつもどおりの表情――この役者にはすっかり騙された。ピエロもあたしも。
 信じられないけど…考えられる可能性はこの1つしかないのだ。






 【次の話へ】


 追記

 あとは組み合わせ総当りです。
 これで正答率は50%ぐらいだと予想です。これまた適当ですが…。

 海鳴り



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